少子高齢化が進む日本では、企業の多様な人材活用がますます重要になっています。
その中でも、障害者雇用の推進は国の重点施策のひとつであり、雇用を支援するための公的助成金制度が数多く用意されています。
この記事では、2025年時点の最新制度に基づき、
企業がもらえる障害者雇用助成金の種類
一人当たりの支給額
申請条件と手続きの流れ
をわかりやすく解説します。
障害者雇用助成金とは?企業が受け取れる支援制度の概要
障害者雇用を促進するための国の助成制度
障害者雇用助成金とは、障害のある方を雇用・定着支援する企業に対して支給される助成金のことです。
厚生労働省が所管しており、「雇用のきっかけづくり」から「職場定着」「職場環境整備」まで、さまざまなフェーズを支援します。
制度の全体像を把握する際は、各助成金の公式解説も合わせて確認すると安心です(例:障害者雇用助成金の種類・支給額まとめ)。
厚生労働省が所管する複数の助成金制度の仕組み
助成金は大きく分けて次の3つの目的に分類されます:
雇用機会の創出(採用やトライアル雇用)
職場定着支援(定着支援や職場改善)
設備整備(バリアフリー化・作業環境改善)
これらを組み合わせて活用することで、採用から定着までを一貫支援できます。
障害者雇用で受け取れる主な助成金の種類と一人当たり金額
【1】特定求職者雇用開発助成金
障害者を新規に雇用した企業に支給される助成金です。
ハローワークを通じて採用することが条件となります。詳細は公的な一次情報である特定求職者雇用開発助成金の公式ページも参照してください。
対象 雇用形態 支給額(最大) 支給期間
重度障害者 週30時間以上 240万円 3年間
重度以外の障害者 週30時間以上 120万円 3年間
短時間勤務(20〜30時間未満) 重度障害者 120万円 3年間
緑のポイント:
中小企業では支給額が上乗せされるケースもあり、雇用コストの実質的な補填が可能です。
【2】障害者トライアル雇用助成金
採用前に一定期間、試行的に雇用(最長3か月)する企業を支援する制度です。
実際の職場適応を確認しながら、雇用リスクを軽減できます。制度の趣旨・要件は障害者トライアル雇用助成金の公式解説で確認できます。
支給額:月額最大8万円/1人あたり(最長3か月)
トライアル雇用終了後、本採用に転換した場合は、特定求職者雇用開発助成金との併用が可能です。
【3】障害者職場定着支援助成金
雇用した障害者の職場定着支援を実施した企業に支給されます。
例えば、ジョブコーチ配置や職場内研修などが対象です。
支給額:一人当たり最大57万円
【4】障害者作業施設設置等助成金
障害者が働きやすい環境を整えるためのバリアフリー改修・設備投資を支援する制度です。
支給額:上限100万円程度(改修内容により異なる)
対象例:
・段差解消・スロープ設置
・点字案内板の設置
・作業台の高さ調整設備導入 など
助成金の対象となる企業・従業員の条件
【企業側の主な条件】
雇用保険適用事業所であること
障害者雇用納付金の滞納がないこと
就業規則・雇用契約書などの労務体制が整備されていること
【雇用される障害者側の主な条件】
身体・知的・精神障害者手帳など、公的な認定を受けていること
週20時間以上の勤務が見込まれること
トライアル雇用から本採用へ転換が見込まれること(優遇あり)
緑のポイント:
支給対象となるのは、原則としてハローワーク経由の採用が条件です。
直接採用(求人媒体経由)の場合は対象外になることもあります。
助成金の申請から受給までの流れ
ステップ①:ハローワーク・労働局への相談
採用前にハローワークへ相談し、対象助成金の確認と計画書の作成を行います。
ステップ②:雇用計画書・申請書類の作成
事業主が計画書を作成し、所管の労働局へ提出します。
採用後の申請ではなく、事前に計画書を出すことが重要です。
ステップ③:採用・雇用契約締結後に申請手続き
雇用契約書や勤務記録、給与明細などを添付して支給申請書を提出します。
ステップ④:審査・支給決定(約2〜3か月)
書類審査後、問題がなければ支給決定が下ります。
不備があると再提出を求められ、支給までの期間が延びることもあります。
赤の注意点:
・雇用開始後に申請しても対象外になる場合があります。
・書類不備や提出期限遅れで不支給になるケースが少なくありません。
→ 必ず「採用前」に相談・計画届を提出しましょう。
障害者雇用助成金を最大限活用するポイント
雇用後の定着支援までを含めた計画を立てる
採用だけでなく、長期的な定着支援まで見据えた雇用計画を立てることで、複数の助成金を組み合わせて受給できます。
就業環境の整備や職場適応訓練も助成対象にできる
トイレ改修、出入口スロープ設置、通勤支援、ジョブコーチ派遣なども対象です。
職場改善と雇用助成をセットで申請すると効果的です。
障害者雇用サポート機関(就労支援センター・ハローワーク)と連携
地域の就労支援センターや障害者職業センターが、企業と本人のマッチングや職場定着支援をサポートしてくれます。
併用できる補助制度も確認
設備改修費補助
人材育成(OJT・職場訓練)補助
など、他の公的補助金との併用が可能な場合もあります。
助成金活用の注意点とよくある誤解
助成金=必ずもらえるものではない
助成金は条件を満たした場合にのみ支給されるため、必ずしも全員が対象になるわけではありません。
雇用期間の途中解雇・離職で支給取り消しの可能性
助成金支給期間中に解雇・自己都合退職が発生すると、支給取消や返還の対象となることがあります。
申請前に雇用した場合は対象外になるケースも
事前申請が必要な助成金では、採用後の後出し申請は認められません。
採用のタイミングと書類提出の順序を必ず守りましょう。
「実績報告」と「計画届」の順序を間違えない
「まず計画届 → 雇用実施 → 実績報告」という流れを守らないと、支給対象外になります。
障害者雇用の助成金を活用するメリット
人件費の一部を公的支援でカバーできる
特定求職者雇用開発助成金などを活用すれば、最大240万円/1人の人件費を補填できます。
これにより、企業の初期コストを大幅に削減できます。
安定した雇用を通じて企業ブランディングにも寄与
障害者雇用を推進することで、社会的信用や企業イメージの向上につながります。
CSR(社会的責任)活動の一環としても注目されています。
ダイバーシティ経営・CSR活動の強化につながる
多様な人材が活躍できる職場づくりは、企業の持続的成長戦略の一部です。
助成金は、その実現を後押しする強力なツールといえます。
まとめ:助成金を活用して“持続可能な障害者雇用”を実現しよう
障害者雇用助成金は、単なるコスト支援策ではなく、企業の成長と社会貢献を両立するための制度です。
一人当たり最大240万円の支援を受けられる
採用から定着まで段階的に助成金を組み合わせ可能
計画的な申請で人件費・設備費を最小限に抑えられる
緑のポイント:
「採用前の準備」と「書類管理」を徹底すれば、助成金を確実に受け取れます。
申請が難しいと感じる場合は、社会保険労務士や助成金専門コンサルタントへの相談も有効です。

