企業の資金調達や債権取引の場面で登場する「償還請求（しょうかんせいきゅう）」という言葉。特にファクタリングや社債などの金融契約において重要な意味を持ちます。
この記事では、償還請求とは何か、償還請求権の仕組み、ファクタリングにおけるリスクと注意点をわかりやすく解説します。
償還請求とは？基本の意味と使われる場面
「償還請求」とは何を指すのか
「償還請求」とは、取引相手に対して支払済みの金銭や債権を返してほしいと求める請求のことです。簡単に言えば、「返してほしい」と請求する権利を指します。
たとえばファクタリングや社債などの金融取引では、「お金を渡した側が特定の条件下で返済を求める」仕組みが組み込まれています。
一般的な金融取引・債権取引における償還請求の位置づけ
償還請求は、金融商品の返済・債権の回収・保証契約など、さまざまな分野で使われます。特に以下のケースで登場します。
- 売掛金を現金化するファクタリング契約
- 企業が発行する社債・投資信託の満期償還
- 金融機関による保証・リース契約の返済義務
日常のビジネスで登場する代表的なケース
- ファクタリング（売掛債権の売却）：売掛金をファクタリング会社に売却した後、取引先が支払えない場合に「償還請求」が行われる場合があります。
- 社債の償還：企業が発行した社債の満期到来時、発行企業が投資家に元本を返済することを「償還」と呼びます。
償還請求権の仕組みを理解しよう
「償還請求権」とは取引相手に返済・弁済を求める権利
「償還請求権」とは、債権者が債務者に対して返済や弁済を求める法的な権利です。契約上で、一定の条件が発生した場合にのみ行使できるのが特徴です。
債権譲渡・金融契約での償還請求の流れ
- 売掛債権や金融資産を第三者に譲渡
- 受取側（ファクタリング会社など）が現金を支払う
- 売掛先が支払不能になると、譲渡側に償還請求が行われる
つまり、譲渡側（資金を受け取った企業）が再度支払う義務が発生するのです。
法的な意味と契約上の記載例
契約書では、以下のように明記されていることがあります。
「債務者が弁済不能となった場合、譲渡人は当社に対して償還請求に応じるものとする。」
この文言がある場合、取引先の倒産などが起きると資金を返す義務（返還義務）が発生します。
ファクタリングにおける償還請求の意味
ファクタリングの基本構造（売掛債権を現金化する仕組み）
ファクタリングとは、企業が保有する「売掛金（未回収の請求書）」をファクタリング会社に売却し、早期に資金化するサービスです。
このとき、契約形態には2種類あります。
償還請求あり（リコース）契約とは？
「償還請求あり（リコース）」とは、売掛先が代金を支払わなかった場合、利用者（債権の売り手）が責任を負う契約です。
つまり、取引先が倒産して入金されなければ、ファクタリング会社から返済を求められるリスクがあります。
償還請求なし（ノンリコース）契約との違い
一方、「償還請求なし（ノンリコース）」とは、取引先が倒産しても利用者に返済義務が発生しない契約のことです。
償還請求あり・なしの違いは、リスク配分を決める非常に重要な要素です。ノンリコース契約では、ファクタリング会社がリスクを引き受けるため、手数料はやや高めになります。
どちらを選ぶべきかの判断基準
- 売掛先が信頼できる企業であれば、手数料の安いリコース契約でも可
- 売掛先に支払い遅延・業績不安があるなら、リスクのないノンリコース契約が安心
- 資金繰りの安定を優先するなら、ノンリコース契約を選ぶのが安全です。
償還請求が発生する主なケース
- 売掛先が倒産・支払い不能になった場合
- 債権の内容に虚偽・不備があった場合
- 契約で「償還請求あり」と定められている場合
償還請求あり・なし契約のリスク比較
| 項目 | 償還請求あり（リコース） | 償還請求なし（ノンリコース） |
|---|---|---|
| 支払い義務 | 売掛先が払えない場合は利用者が負担 | 利用者は返済不要 |
| 手数料 | 低め（2〜5％程度） | 高め（5〜15％程度） |
| リスク | 利用者に残る | ファクタリング会社に移転 |
| 契約の主な利用者 | 売掛先の信用が高い企業 | 資金繰りが厳しい中小企業 |
償還請求のリスクを回避する方法
- 契約前に「償還請求の有無」を必ず確認する
- 売掛先の信用調査を徹底する
- ノンリコース契約を扱うファクタリング会社を選ぶ
- 悪質な業者を避ける（登録・許可情報を確認、明確な手数料提示の有無など）
ファクタリング以外で使われる償還請求の例
- 投資信託・社債など金融商品： 満期時に元本を返す行為を「償還」と呼びます。
- リース契約や保証契約： 契約者に代わって支払いを行った後の返済請求も償還請求にあたります。
まとめ：償還請求の仕組みを理解してリスクを回避しよう
償還請求とは、特定の条件下で返済を求める権利のことです。ファクタリングなどの契約では、「償還請求あり（リコース）」か「なし（ノンリコース）」かによってリスクが大きく異なります。
- 契約前に必ず「償還請求の有無」を確認する
- 売掛先や契約相手の信用調査を怠らない
- ノンリコース契約＋信頼できる業者を選ぶ
償還請求の仕組みを正しく理解すれば、資金調達リスクを最小限に抑え、安心して事業を運営できます。
